食と赤血球と細胞のこと

思えば今から20年前の1998年12月、無農薬農業をされている大分県の赤峰勝人さんの講演会に参加し、非常に貴重なお話を拝聴したことが、その後の運命を大きく変えました。彼の話のあらましはこうです。

「そもそも赤い血である赤血球は、これまでの医学常識でいうように骨髄で作られるのではなく、実は消化管の小腸で生み出されている。だから赤血球は食事内容・腸内細菌など腸内環境によって大きな影響を受ける。また赤血球は全身を循環することによって、適宜全身の細胞に変化している。つまり幹細胞でもある。だから赤血球の性状が新しい身体の細胞に大きく影響する。ガンなどは赤血球の性状の悪化によって発生することは間違いない。」

まともに医学を学んだ医師にとってはまさに寝耳に水のような話です。そもそもこれまでの医学定説というものはこうでした。

『・・・赤血球や白血球はそれぞれ別々に骨髄という骨の中で発生する。全身を巡る赤血球は酸素と結合して各細胞に酸素供給をするのがその役割。120日余りの寿命、そして脾臓で破壊され排泄される。全身の体細胞が増殖するのは赤血球とは無関係であり、各臓器の細胞が細胞分裂をして増えていく。・・・』

 

講演会が終了し、講師の赤峰さんが携えてこられた推薦の書「よみがえる千島学説」を熟読しました。岐阜大学の千島喜久男医学博士が提唱した膨大な一連の学説をわかりやすく解説したこの本を一気に読み終えると大きな感銘を受けるとともに、これが本当ならとんでもない事態であることがわかりました。すぐに10冊くらいをまとめ買いして、知人等に読んでいただきました。市民病院の医師たちの中で読後深く納得して賛同してくれたのはたった一人の外科の後輩だけでした。

 

すぐに自然医学を知っている病院外の知人に話すと、なんとこの千島学説を知っているという医師や東洋医学関係の治療家、食養生をされている健康活動家の方々がゾロゾロいました。1999年一年をかけて毎月千島学説勉強会を名古屋の鶴舞で開催しました。徐々にこの学説は真実をついている、今の学説が実は間違っているということを確信しました。

それから20年経過し、千島学説はまだまだ日の目を見ていませんが、それでも医学界に多少の変化が起こっています。

 

まず、腸内環境というものが非常に重要であることがようやく医療現場でも認知されてきました。腸内細菌のバランスが大切であること、また食事の中身、特に脂質のことが重要視されるようになりました。

千島学説からすると当然のことで、赤血球を構成する細胞膜を作るには健全な脂質構成が必要です。オメガ3やオメガ6などの不飽和脂肪酸は人体が合成できない必須の脂質です。オメガ9と飽和脂肪酸はいくらでも肝臓が合成します。しなやかで変形能に富む赤血球を作るには不飽和脂肪酸が大切なのです。実際にオメガ6であるガンマーリノレン酸を投与した患者の赤血球は非常にしなやかで運動性が増すという論文も存在します。食事と赤血球に関連がある証拠です。

 

 

現在の骨髄で赤血球が合成されるという通説も間違いではないかもしれません。しかし全てでないようです。参考文献3にあげた「隠された造血の秘密」を著した酒向猛博士は多治見や中津川市民病院の外科部長を歴任しておられ、よく存じ上げています。彼によると、骨髄で造血しているとすると計算上とても数が足りないそうです。1日に1700億の赤血球が生産されるには、骨髄ではとっても無理であることを述べておられます。正常な健康体では大部分は小腸で赤血球が合成されているようです。

 

赤血球の細胞への変化

いわゆる細胞の増え方に関して、これまでは細胞分裂説が常識的でしたが、近年万能細胞=幹細胞が全身の細胞の原基であるという考えが登場しました。つまり分裂増殖説一辺倒ではなく、いわゆる幹細胞由来という考えが主流になってきました。しかしその幹細胞が正常の人体で通常どこにあるのかは、かの山中伸弥教授もまだ解明できていません。ようやく実験でひねり出しただけのことです。その後リンパ球(白血球の一部)が幹細胞であるという説を発表したのが小保方晴子博士です。彼女のSTAP細胞という概念は、通常のリンパ球にある種の刺激を与えると、他の細胞に変化するということです。やや千島喜久男博士の学説に近づいています。その後のSTAP細胞説の不自然な葬られ方が非常に残念でなりません。千島学説のいう赤血球が万能細胞であることは、まだまだ医学界は認めていませんが、徐々にそういう研究が増えてくると期待しています。

 

いずれ血液に関する学説がどうであろうが、健康を得られればそれでいいのです。つまり健全な赤血球を生成するための正しい食事を実践して行けばいいのです。つまりしなやかな赤血球の細胞膜を作るため、膜の脂質二重層の材料になる十分な量の不飽和脂肪酸を摂取すること。これが肝要となります。さらに血液の流れを滞りなく整えることが大切です。血流をコントロールするのは自律神経。その自律神経を左右するのは感情なのです。

生きがいの喪失、不安恐怖、多忙や睡眠不足などはすべて自律神経のバランスを崩し、血流はもちろん腸の働きも悪化させていきます。発病の原因はここにあると言って間違いありません。

 

 

脂質といえば、「ロレンゾのオイル/命の詩」という映画が思い出されます。小児の先天的難病である副腎皮質ジストロフィーは、脂質代謝異常で神経が麻痺する病気、ところが食事の脂質を改善することで進行が止められたのです。これを考え出したのは医師ではなく、患者の父親なのです。オレイン酸とエルカ酸という脂肪酸のバランスが鍵でした。ちなみにこのエルカ酸は菜種油に含まれています。さらにオメガ9、6、3を適度の比率で含む菜種油は理想的な油です。

 

 

参考1 よみがえる千島学説 忰山紀一(かせやまきいち)著 なずなワールド発行 0974-32-7111

参考2 血液と健康の知恵 千島喜久男著 地湧社

参考3 隠された造血の秘密 酒向猛著 Eco-クリエイティブ発行

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