血管がわかれば運動がしたくなりそして薬が要らなくなる

実際の血管の中がどうなってるか、鏡でも見るようにじっくりと観察できたのなら、だれだって毎日の食べ物や血の流れに無関心ではいられないでしょう。しかし残念なことにそれは叶いません。いろいろな手段を駆使して血管の内腔を推しはかるしかないのです。

血管の異常を知るには

第一の方法は、常識的なことではありますが、血圧測定です。血管に異常があれば、たいていの場合、血圧は上がります。しかし血圧が高いからといって、すべて血管が悪化しているとは限りません。また異常があるからといって、すべて高血圧になるとは限りません。血圧が正常な方が、くも膜下出血や心筋梗塞になることはいくらでもあります。

非常におかしなことに、血圧結果だけを気にして、それだけを下げれば事足れりと、降圧剤を漫然と内服するという愚行がまだまかり通っています。高血圧の原因をしっかり探りましょう。血圧測定は、血管の状態を推測する一手段に過ぎません。このことを理解していただきたいものです。自律神経の影響を受けやすく、非常に変動のある検査であることもご承知ください。

第二に血糖値の測定があります。高血糖は血管内膜のタンパクを障害します。動脈壁をもろくして出血や血栓を作ります。特に起こりやすいのが腎臓と網膜、足趾末端などです。糖質の摂りすぎ、過食、早食い、深夜の食事などはすべて高血糖の原因です。

第三の方法が、ご存知コレステロールの血中濃度を測定することです。これに関しても高いから悪いという短絡的思考から、とにかくコレステロール合成酵素阻害薬などという劇薬を漫然と内服することがまだ行われています。あくまで酸化したコレステロールが動脈硬化をもたらすのであって、正常コレステロールはなんの問題もありません。動脈硬化のメカニズムはほぼ解明されていますが、活性酸素の処理については難題です。なぜなら白血球にとって活性酸素は異物処理には欠かせない大事なものだからです。

できればその活性酸素の度合いが測定できればいいのですが、なかなかそれは実用化されてません。しかし脂質を酸化、劣化させるフリーラジカルが元凶であることは間違いありません。

しかし、カルシウムの動脈沈着は、脂質とはまた別のメカニズムで起こっていますので、脂質だけが問題なのではありません。

第四は、様々な特殊検査です。時間と手間さえかければ今は色々な方法で血管の状態を知ることができます。まずは網膜の血管を見ることです。眼科に行けば即検査していただけます。かつては内科医が眼底検査をするようにしていたのですが、どんどん分業化してが眼科医の仕事になってしまいました。また血管の状態は超音波で見ることができます。壁の状態や厚さがある程度わかります。頸動脈を観察することは大事です。他にも脈波伝播速度を調べたり、血管内皮機能を調べる「血流依存性血管拡張反応FMD」という方法もあります。これは後に述べる一酸化窒素にも関連があります。

 

お分かりのように、色々な新しい検査をすることはいいとして、その結果の数字だけを調整するという態度は、とても対症療法的で、お勧めできるものではありません。

 

適度な運動は全てに効く

当コラムでも繰り返し述べていますが、適度な運動のもたらす効果は絶大なものがあります。有酸素運動によって、過度な肥満が解消され、末梢血管が拡張し、塩分が排泄され、そのため血圧も下がります。そして何よりストレスが発散されるという効果があります。ですから高血圧を薬品でコントロールすることで、運動や食事をおざなりにしてしまえば何にもなりません

 

そしてもう一つ、運動は一酸化窒素(NO)の分泌をさかんにします。この一酸化窒素(NO)という物質については、最近広く研究がなされているところです。これは血管内膜の細胞が絶えず分泌して血管内面の修理や新生を行う、いわばガス状ホルモンです。このNOは、ある酵素によってアミノ酸から合成されます。今はその合成酵素が正確に分析され、その酵素を働かなくする薬剤も存在します。そんなものは血管にとっては毒なので、薬にならないと思われるでしょうが、どことがどっこい、これが最新の抗がん剤になっているのです。当然副作用があります。

 

さてこのNO、いろいろな働きがあり、これを利用してこんな薬物もできています。狭心症の「ニトログリセリン」は、このNOを分泌させます。おなじく「リアップ」という名をお聞きになったことがありますか?ご存知発毛剤です。毛根の血流をアップさせるのです。また「バイアグラ」もご存知でしょう。血流アップの作用は同じです。

 

過剰に注意

しかしこのNOも両刃の剣で、過剰になってもこまります。NOの低下では確かに動脈硬化や高血圧が生じますが、NOが高くなり過ぎても異常が起こると考えられています。幸い?このNOの濃度を測定することは通常は行いませんから、一喜一憂することはないのですが、人為的に薬剤でこのNOを操作することは戒めなければなりません。かならず反作用がありますから。

 

薬物ではなく、運動によってNOの活動を活発にして、必要な場所に血管が新生することが大切だと思われます。もう一つ、咀嚼もNO分泌を推進します。よく噛んで食後に軽く運動する、これができれば苦労はしません。

 

末端のストレッチ、マッサージ

運動に際してまず行っていただきたいのは、末端のストレッチ、血行回復です。いつも指導しているように手や足の指を十分に曲げ伸ばしし、充分マッサージしてください。顔のまわりも重要です。頭頂、目の周り、鼻の脇などもこすってください。また耳や首もしごいたりマッサージをしてください。自ら行う全身マッサージは血行改善に貢献します。

 

過度の運動でダメージ

運動もさきほどのNOと同様、少なくてもいけませんが、多すぎてもどうかと思われます。日頃やってなかった人が急に運動を始めて、過剰な活性酸素をつくってしまい、その除去が間に合わない場合、動脈の壁が異常を起こすことは十分に考えられます。ガンになるケースもあるので本当にご注意を!

発がんのメカニズム

千島喜久男博士と安保徹教授の研究をもとにして書きました

1 万能細胞の分化異常がガンになる

2 赤血球・白血球が万能細胞である

3 赤血球の停滞や微小出血部位が発がんの温床

4 血流の改善が必要

5 赤血球の生成は小腸である

6 脂質が赤血球の細胞膜を作る

7 オメガ3、6などの多価不飽和脂肪酸の摂取が重要である

8 ミトコンドリアの低下が発がんを誘発する

9 ミトコンドリアに必要な抗酸化剤やビタミンB群を十分に摂取する

10 適度な有酸素運動の習慣を作りミトコンドリアを徐々に増加させる

11 過剰な糖分摂取はミトコンドリアを低下させる

12 腸内細菌の健全なバランスが赤血球合成に関与する

13 野山や大地と接することで、腸内フローラが活性化する

14 胃角部やS状結腸など蠕動が強く、粘膜が出血しやすいところでガンが発生している

15 乳がんも上半身の運動不足でリンパのうっ滞が起きているから発生しやすい

16 子宮がんなど他の臓器も血流不全、うっ滞が関与している

17 ガン遺伝子はガンの原因ではなく、ガンが出来てから発生するもの

18 遺伝の要素はなくもないが、環境要素に比べて小さい

微生物のこと

近頃の紙面をにぎわせていることの一つが、家畜の感染症のことです。大量飼育をされている豚やニワトリたちが、コレラやウイルスで死亡してしまい、それだけならまだしも感染源となることを恐れて、発病していない家畜たちも大量に一緒に葬ってしまうという悲劇が起こっています。

 

北里柴三郎らの業績

感染症の実態が解明されたのも、まだほんの百年ほど前のことです。ドイツのロベルト・コッホ、フランスのルイ・パスツール、日本の北里柴三郎らの業績は良く知られています。それもドイツ製の精密な顕微鏡があってのこと、コッホは生前にカール・ツァイスのおかげであることを書き残しています。

19世紀のアメリカには多数の移住者が住み着き、にわか都市が形成されました。五大湖に近いシカゴは、インフラ整備が遅れ、非常に不潔なことで有名でした。急遽下水を作ったのですが、糞尿や家畜の屠殺による真っ赤な血液もそのままシカゴ川やミシガン湖に垂れ流しという状態でした。

すでにミシガン湖から水を引いて飲料の水道を作っていたから大変です。人口が増えるに従い、致命的な感染症が流行しました。特にコレラが猛威を奮い、多い時は一日に60名も亡くなったそうです。コッホがコレラ菌を確認をしたのは1884年、その後ようやく汚水処理などが始まりました。

そしてついに1908年シカゴの医師レアルが、独断で水道水に次亜塩素酸を混入し、塩素消毒を開始しました。今では当たり前になっている塩素消毒ですが、最初は市民の猛反対にあったということです。

 

微生物は病原菌?

このように19世紀に猛威を振るった感染症も、原因が解明されることによって、手洗い、消毒、滅菌の習慣が生まれ、やや克服できたように思われています。とにかく現代日本では重篤な感染症の心配はあまりせず、まずは安心して生活しています。そのかわり微生物は病気を引き起こす厄介ものという、短絡的な常識だけが広まってしまいました。

 

微生物と多細胞生物

かつてある医学博士がこう言っていました。微生物は多細胞生物の中から生まれる、また自然発生もしていると。博士の名は岐阜大学の千島喜久男氏です。しかし今、そんな学説は当然受け入れられてはいません。

しかし近年微生物と昆虫とがいつも共生関係の中で生きていることがわかってきています。たんなる共存に留まらず、微生物の遺伝子が昆虫の中に取り入れられ、その遺伝子によって非常に有用なタンパク質が合成されてる例もあるのです。

 

ウイルスとバクテリア

またたくさんのウイルスがバクテリアの中で生きていることがわかっています。このバクテリアに入り込むウイルスをバクテリオファージといい、バクテリアの遺伝子に影響を与えます。例えば薬剤耐性遺伝子を得たある種のバクテリアが、そのファージを通じて、他のバクテリアにその耐性能力を広げるのです。

こうした現象は特別なことでなく、実はウイルスとバクテリアはいつも共生関係にあって情報のやり取りをしていたのです。

つまりウイルスやバクテリア、カビ類などの微生物は、いつも大型の生き物に入り込み、共生共存していたわけです。その中で、珍しい菌やカビが来ると、過剰反応を起こして発熱や痛みや下痢をしてしまう、それを感染症と呼んだだけのことです。

 

土いじりや野山の散歩

近頃ようやく腸内細菌の重要性が認識され始め、豊かな腸内細菌のフローラを保つためには十分な食物繊維が必要であることが常識になりました。

さらに大地や野山の環境が腸内の常在菌に好影響を与えていることもわかってきました。草むしりや耕作、さらに野山のハイキングなど、土と接することが、とてもお腹の調子を良くしてくれるのです。

 

バクテリアの菌体成分

バクテリアも新陳代謝しており、その菌体成分は壊れて腸で吸収しています。その成分の中に、リポポリサッカライド(LPS)という、糖脂質があります。

このLPSは、グラム陰性菌がもっている細胞壁成分で、これまで危険物質とされていました。病原菌が体内で増殖し、その菌が壊れた時そのLPSは大量に放出されて、高熱を出したり、血圧を下げたり、免疫を変化させたりしていたのです。そんなLPSですが、実は非常に役に立っていることがわかってきました。

 

マクロファージを活性化

マクロファージというのはとても原始的な白血球で、呼吸器や腸、皮下組織などでも活動しています。最初に異物や毒物をキャッチして、それを全身に教えるのです。そのためとても敏感なアンテナ、つまりレセプタが必要です。これをトール・ライク・レセプター(TLR)と呼び、数々発見されています。LPSはこのレセプターを刺激し、免疫活動を活発にするのです。

 

共存の中で疾病を減らしていくこと

生命体の世界は多種多様の共存で出来上がっています。

ちょうど森の中で、昆虫が花の蜜に引き寄せられ花粉を運ぶ、実った果実を小動物や小鳥が食し種を運ぶ、また小鳥たちはその昆虫も餌にします。こうした小動物を餌に鷹や鷲などの猛禽類や大型動物が生きています。そしてそれらの糞や食べ残しが昆虫や植物を育てているのです。生命の循環の中に、これまで認知できなかったウイルスや微生物を組み込まなければいけません。一緒に生活する仲間だったのです。

欧米で発明された菌の消毒、滅菌という概念は、排泄物や家畜の管理があまりに不潔だった環境から生まれました。ところが江戸期の日本では消毒や滅菌などしなくても、危険な感染症はそれほど問題になっていませんでした。排泄物は発酵させて大切な肥料にし、家畜の屠殺もめったにすることはなかったようです。さいわい清潔な真水が豊富という好条件もあり、手を洗い、体をあらう習慣もありました。

微生物と敵対するという考えをゆるめていき、上手に利用していく時代です。すでに豊かな発酵技術をもっている日本がその先端を行くべきでしょう。

食と赤血球と細胞のこと

思えば今から20年前の1998年12月、無農薬農業をされている大分県の赤峰勝人さんの講演会に参加し、非常に貴重なお話を拝聴したことが、その後の運命を大きく変えました。彼の話のあらましはこうです。

「そもそも赤い血である赤血球は、これまでの医学常識でいうように骨髄で作られるのではなく、実は消化管の小腸で生み出されている。だから赤血球は食事内容・腸内細菌など腸内環境によって大きな影響を受ける。また赤血球は全身を循環することによって、適宜全身の細胞に変化している。つまり幹細胞でもある。だから赤血球の性状が新しい身体の細胞に大きく影響する。ガンなどは赤血球の性状の悪化によって発生することは間違いない。」

まともに医学を学んだ医師にとってはまさに寝耳に水のような話です。そもそもこれまでの医学定説というものはこうでした。

『・・・赤血球や白血球はそれぞれ別々に骨髄という骨の中で発生する。全身を巡る赤血球は酸素と結合して各細胞に酸素供給をするのがその役割。120日余りの寿命、そして脾臓で破壊され排泄される。全身の体細胞が増殖するのは赤血球とは無関係であり、各臓器の細胞が細胞分裂をして増えていく。・・・』

 

講演会が終了し、講師の赤峰さんが携えてこられた推薦の書「よみがえる千島学説」を熟読しました。岐阜大学の千島喜久男医学博士が提唱した膨大な一連の学説をわかりやすく解説したこの本を一気に読み終えると大きな感銘を受けるとともに、これが本当ならとんでもない事態であることがわかりました。すぐに10冊くらいをまとめ買いして、知人等に読んでいただきました。市民病院の医師たちの中で読後深く納得して賛同してくれたのはたった一人の外科の後輩だけでした。

 

すぐに自然医学を知っている病院外の知人に話すと、なんとこの千島学説を知っているという医師や東洋医学関係の治療家、食養生をされている健康活動家の方々がゾロゾロいました。1999年一年をかけて毎月千島学説勉強会を名古屋の鶴舞で開催しました。徐々にこの学説は真実をついている、今の学説が実は間違っているということを確信しました。

それから20年経過し、千島学説はまだまだ日の目を見ていませんが、それでも医学界に多少の変化が起こっています。

 

まず、腸内環境というものが非常に重要であることがようやく医療現場でも認知されてきました。腸内細菌のバランスが大切であること、また食事の中身、特に脂質のことが重要視されるようになりました。

千島学説からすると当然のことで、赤血球を構成する細胞膜を作るには健全な脂質構成が必要です。オメガ3やオメガ6などの不飽和脂肪酸は人体が合成できない必須の脂質です。オメガ9と飽和脂肪酸はいくらでも肝臓が合成します。しなやかで変形能に富む赤血球を作るには不飽和脂肪酸が大切なのです。実際にオメガ6であるガンマーリノレン酸を投与した患者の赤血球は非常にしなやかで運動性が増すという論文も存在します。食事と赤血球に関連がある証拠です。

 

 

現在の骨髄で赤血球が合成されるという通説も間違いではないかもしれません。しかし全てでないようです。参考文献3にあげた「隠された造血の秘密」を著した酒向猛博士は多治見や中津川市民病院の外科部長を歴任しておられ、よく存じ上げています。彼によると、骨髄で造血しているとすると計算上とても数が足りないそうです。1日に1700億の赤血球が生産されるには、骨髄ではとっても無理であることを述べておられます。正常な健康体では大部分は小腸で赤血球が合成されているようです。

 

赤血球の細胞への変化

いわゆる細胞の増え方に関して、これまでは細胞分裂説が常識的でしたが、近年万能細胞=幹細胞が全身の細胞の原基であるという考えが登場しました。つまり分裂増殖説一辺倒ではなく、いわゆる幹細胞由来という考えが主流になってきました。しかしその幹細胞が正常の人体で通常どこにあるのかは、かの山中伸弥教授もまだ解明できていません。ようやく実験でひねり出しただけのことです。その後リンパ球(白血球の一部)が幹細胞であるという説を発表したのが小保方晴子博士です。彼女のSTAP細胞という概念は、通常のリンパ球にある種の刺激を与えると、他の細胞に変化するということです。やや千島喜久男博士の学説に近づいています。その後のSTAP細胞説の不自然な葬られ方が非常に残念でなりません。千島学説のいう赤血球が万能細胞であることは、まだまだ医学界は認めていませんが、徐々にそういう研究が増えてくると期待しています。

 

いずれ血液に関する学説がどうであろうが、健康を得られればそれでいいのです。つまり健全な赤血球を生成するための正しい食事を実践して行けばいいのです。つまりしなやかな赤血球の細胞膜を作るため、膜の脂質二重層の材料になる十分な量の不飽和脂肪酸を摂取すること。これが肝要となります。さらに血液の流れを滞りなく整えることが大切です。血流をコントロールするのは自律神経。その自律神経を左右するのは感情なのです。

生きがいの喪失、不安恐怖、多忙や睡眠不足などはすべて自律神経のバランスを崩し、血流はもちろん腸の働きも悪化させていきます。発病の原因はここにあると言って間違いありません。

 

 

脂質といえば、「ロレンゾのオイル/命の詩」という映画が思い出されます。小児の先天的難病である副腎皮質ジストロフィーは、脂質代謝異常で神経が麻痺する病気、ところが食事の脂質を改善することで進行が止められたのです。これを考え出したのは医師ではなく、患者の父親なのです。オレイン酸とエルカ酸という脂肪酸のバランスが鍵でした。ちなみにこのエルカ酸は菜種油に含まれています。さらにオメガ9、6、3を適度の比率で含む菜種油は理想的な油です。

 

 

参考1 よみがえる千島学説 忰山紀一(かせやまきいち)著 なずなワールド発行 0974-32-7111

参考2 血液と健康の知恵 千島喜久男著 地湧社

参考3 隠された造血の秘密 酒向猛著 Eco-クリエイティブ発行

不安恐怖が治癒を妨げる 

当然のことながら自然治癒力は健康にとって欠かせないものです。そしてこれが正常に働かないから病になるとも言えます。自然治癒する力はどうしたら身につけることができるのでしょうか。

 

暴飲暴食

この体に備わった自然の回復力を妨げるものを考えてみましょう。当然考えられるのは、臓器への負担、酷使です。最も多いのが、暴飲暴食でしょう。消化器官を酷使し、消化液を大量に分泌し、肝臓や膵臓に負担をかける行為です。誰もがわかってはいても、一生を通じてやらかしてしまいます。誰にも経験があり、なかなかやめられないものです。定期的に断食、半断食、少食の習慣をつければいうことはありません。イスラム教徒は本来そういう習慣でした。流行りの胃腸風邪も日頃から消化管を酷使していると感染しやすいものです。暴飲暴食で粘膜が疲れていれば、容易にウイルスの侵入を招きます。

逆に食事が極端に少なくても自然治癒は働きませんから、中庸が一番ということでしょう。痩身のため過度な減食をするのも危険です。

 

運動のアンバランス

次に多いのが過剰な運動による運動器の障害です。スポーツ選手はもちろん学生や中高年でも休みを取らないで運動を継続し、関節や筋肉、腱を痛めています。運動は少しずつ毎日継続していくもの。急激に長時間行えば誰もが怪我をします。少しずつ運動を行えば徐々に血流が増加し、血管や筋肉や骨膜などが増強されていきます。そうすれば少々のケガもかなりのスピードで改善していきます。ほぼ毎日行うことが大事です。ですからケガをしても適度な運動を継続しながら治していくのが正しいやり方です。もちろん内臓疾患でも運動が治癒効果をもたらします。

これは体温という要素に関係します。日常から定期的な運動をしていればいわゆる平熱がわずかに上昇します。アイドリングを大きめにやっていると思ってください。エンジンがいつも温まっているという状態は、身体にとって最高の自然治癒力を発揮します。

 

不安恐怖

最後に自然治癒を邪魔しているものは、睡眠不足など頭の休憩の不足です。深い眠りのノンレム睡眠が2時間あれば十分と言われます。しかし気になることや心配事があると、そのノンレムも邪魔されます。ですから浅い眠りの連続で疲れがなかなか取れません。

いわゆるストレスというものも、自覚している場合と、慢性化して自覚すらできなくなる場合とがあります。後者のようにストレスを意識していない場合の方が多く、それは対処にも時間がかかります。

 

慢性化した心のストレスには、様々な形があります。もっとも多いのが漠然とした将来不安です。現代社会は全ての方が何らかの不安を抱えていると言っても過言ではないでしょう。非常に不安定な社会基盤の上に生活をしているからです。どの国も巨大な財政赤字を抱えていますし、いわゆる株式会社という組織も、株という名の借金をして成り立っているのです。そして銀行という名の金貸しが大手を振ってのさばっているという社会構造が出来上がっています。これは現代社会が選択した結果なのです。世界中がそうなっているのです。誰かが借金をしてくれないと経済が回らないようになっています。ですから不安があるという認識はいつまでたっても消えないのです。

こうした社会不安は、実は経済を盛んにする一つの方法なのです。大衆に言いようのない不安や恐れ、不安定感、欠乏感、不満足があればあるほど商業活動はやりやすいのです。

 

そしてその不安の根源には西洋の基本概念があります。何千年と戦争の絶えなかった欧州大陸で培われた文明は、競争と努力がなかったら生き残れませんでした。常に上位を目指す。生き残りをかけて不断の努力を惜しまない。こうした生き方を何千年と続けてきてようやく勝ち残った方々が、現在の欧州を築いてきました。そして頂点に達したものだけが全てを支配するという弱肉強食、モノポリー、優勝劣敗の思想が強く生きています。

かつてある高等学校で健康講座をさせていただく機会がありました。講座の最後に記憶してほしい言葉として黒板に大きく「脱競争、脱努力」と書きました。これには教職員の方々も賛否両論だったようです。高校生は人生で一番努力しなくてはいけない時期と誰もが捉えています。そういう社会通念がまだまだ残っているということです。西洋から渡来した概念は日本に根付いてしまいました。

 

参考にあげた二冊をぜひご一読ください。こうした過酷な社会通念がいかに間違っていたか、はっきりと見せられます。本来何ら努力も競争も必要のない素晴らしい要素がこの地上では整えられているのです。資源も食も十分にあり、また次々に起きる自然現象も、すべて良い方向になるためのものなのです。太古からの地球の歴史を見れば、いかに生命を育むのに好条件が整っているかがわかります。まさに奇跡です。

幼少期から強制的に植え付けられた生きていくための競争、努力。その結果徐々に自己嫌悪が生まれ、努力しなかった過去を悔やみ、劣等感を持ち、他人を羨み、妬むといいう図式です。これらはすべて過酷な過去の遺産です。かなぐり捨てなければなりません。自己の存在に自信を持つことです。未来を憂えない、未来を予測しないことです。また過去も無視しましょう。すべて必要な過去だったのです。するととてつもない自然治癒力が湧いてきます。

 

脱努力が始まった

人の進化の過程において通らなければならなかった部分でしょうが、これからは違います。かつての日本のように、餅は餅屋という各自がそれに相応しい役割を担って、競争ではなくそれを見つけていく時代です。勤労を喜び、互助が当たり前になる共生の社会は始まっています。

 

 

参考(1) 喜びから人生を生きる! 〜臨死体験が教えてくれたこと〜

アニータ・ムアジャーニ著 奥野節子訳

ナチュラルスピリット発行

 

 

参考(2) もしここが天国だったら? 〜あなたを制限する信念から自由になり、本当の自分を生きる〜

アニータ・ムアジャーニ著 奥野節子訳

ナチュラルスピリット発行

これからは運動薬

 

現代人が運動不足であることは誰にも自明のことで、これだけ自家用車やバス・電車が発達すれば、歩く距離は確実に減少していき、さらに宅配システムのおかげで持物も持たなくなりました。さらに多忙な現代人は、散歩や運動にかける時間も充分にありません。

言わずもがな運動不足は生活習慣病の主因の一つであり、なんとかして解消していかなければならないことです。そこで今回は少ない時間で最も効率良くできる運動、それを是非お伝えしたいと思います。

 

脊椎・骨盤の運動が重要

 

脊椎動物の原点である魚類は、泳ぐ時に背骨を左右に揺らして進みます。トカゲやヘビも同様(蛇行運動)です。脊椎を常に動かしているのです。哺乳類になると馬や猫の走り方を見てわかるように、背骨の縦の波動運動です。いわば縦の蛇行運動が走っている時の姿です。脊椎動物の歴史は長いですが、どの脊椎動物も背骨を縦横に運動させていることは確かです。

 

毎日の運動=スワイショウ

 

スワイショウという名は、近年日本でも広く知られるようになりました。喜ばしいことです。その原点は文献によると達磨さんにまで遡るようです。達磨易筋経と言う古い文献にも、腕振りと言うこのスワイショウが紹介されています。その効果を百病皆治というのはともかく、ある種の慢性病に顕著な効果が認められているそうです。納得できる話です。

スワイショウには二種類あって、両腕を前後に動かす腕振り式と、腰をひねる方法とがあります。そのどちらも素晴らしい運動です。スワイショウとは中国語ですが、放り投げると言う意味だそうです。

 

1.前後の手振りスワイショウ 足は肩幅に開きしっかり大地を踏みしめます。そして両腕を一緒に前後に振るだけです。後ろに腕を振る時に意識して早く大きく動かし、前に振る時はむしろ惰性で動かします。そして後ろに振る時に息を吐くとさらに効果が上がります。腕にあ合わせて膝を小さく屈伸するとさらに良いです。

 

2.腰をひねるスワイショウ

やはり足は肩幅に開き、しっかりと大地に立脚、下半身を安定させます。上半身3、下半身7という力配分を意識します。これを上虚下実と言います。背骨はまっすぐに保ったままゆっくりと腰を回転させます。その時両腕は脱力し、ぶらぶらの腕がちょうどデンデン太鼓のように体幹に絡みつく感じです。デンデン太鼓体操と呼ばれることもあるそうです。

足が大地を踏みしめ、その時膝を軽く曲げると下半身が安定します。口をやや開けて目は数メートル前方を見下げます。首は無理に回さず、腰の回転についていくだけでいいです。

 

合計20分

最初の4分は軽く、次の4分はやや回転を大きくし、次の4分では膝を上下させます。これが一番運動量の大きい動作です。次の4分は最初のように軽い回転に戻し、最後の4分はしっかり回します。これで合計4分を5回繰り返したことになります。芯から体温が上がってきてしっとりと汗をかきます。

有名な西野流呼吸法でも「華輪」と言う基本行法があります。やはり手を左右に捻るように振るデンデン太鼓と同じ体操です。そこには全身の血行を良くし、冷え性、腰痛、便秘に効果があると書いてあります。

 

西野流呼吸法の提唱者、西野皓三氏はこの「華輪」を延々と長時間やることで、気の奥義に達したとも言われています。

 

骨盤というのは、中央の仙骨と寛骨とで形成されています。仙骨は脊椎骨の一部であり、脊髄神経が通っています。仙骨のことを英語では「SACRUM」と言い、神聖なる骨という意味になります。それだけ重要な骨であることを示しています。この回転スワイショウは、脊椎の中にある中枢神経脊髄を動かすことによって、脳脊髄液の循環にも寄与します。また自律神経の一部である副交感神経は、この仙髄から出ていますし、交感神経は頸髄、胸髄、腰髄から伸びています。

 

本当に不思議なことに、この回転スワイショウを20分間しっかりと継続すると、素晴らしい効果が出てきます。まず1日の始まりに必要なやる気やプラス思考、さらに素晴らしい思いつきまで起こってきます。精神面での発展的思考を助けてくれる効果があるのです。また規則的で律動的な運動なので、気功瞑想状態、禅の境地(入静)にもなるわけです。これを「動禅」と呼ぶ人もあります。仙骨を中心とした筋骨を柔軟に動かすことは、それこそ神聖なる発想や行動につながるのでしょう。

 

もちろん骨盤内臓を揺り動かしているので、消化管はもちろん、泌尿生殖器系、婦人科系の臓器の血流も改善します。ですから南米コロンビアで健康指導をしている井上真(アトム)先生は、この回転スワイショウをまず指導しています。どんな難病も治してしまう先生ですが、但しこのスワイショウを20分間継続し、それを1日に3回行う事を必ず義務付けています。

ポイントは、下半身をしっかり安定させるため、丹田に重心を置く事を心がけます。丹田に力を込めるには、ヘソの下の腹直筋を緊張させることです。二十分間の運動によって、膝、腰の下半身がしっかりと鍛えられるわけです。すぐに実行してください。継続してください。

薬害について

「薬は何も治さない。もっと違う方法があるんじゃないか。薬に頼らない精神医療のシステムを確立せよ、と強く言いたいです。」これはPTSD(心的障害後ストレス障害)と診断され、抗精神薬を多剤服薬していた患者さんの断薬後の言葉です。

「抗うつ剤には攻撃性や興奮状態を出現させる副作用を伴う可能性があり、抗うつ剤などの影響で犯行当時、躁状態とうつ状態が入り混じり、心神耗弱状態にあった。」これは1999年全日空ハイジャック事件で機長を殺害した事件の裁判での東京地裁の判決です。

 

記憶に新しいのは、2014年理化学研究所の笹井芳樹氏の縊死自害の報道でしょう。いわゆるSTAP細胞の研究において、不正があったとの冤罪で不当な攻撃を受け、強い責任を感じた笹井氏は自ら死を選択したのですが、実は精神ストレスのため、心療内科で投薬を受けていたようでした。イギリスの精神薬理学者ヒーリーは「抗うつ剤で自殺する人は、淡々とした気持ちでするようだ。」と書いています。つまり薬物によって変に大胆になってしまうようです。

 

ウツは病気ではなく、単なるうつ状態

うつ状態というのは生きていれば多かれ少なかれ、いつでも誰にでも起こることです。人生の大きな転機に際して、選択に迷ったり、将来が不安になったり、眠れない日が続き、頭がボーッとなって考えがまとまらない、仕事にならない日々が続きます。打ち明けられる相手が見つからないと、さらに症状は続きます。しかし、これは病気ではありません。当然血液検査も正常、頭の画像診断も正常です。多少体温や脈拍数には変化があっても、それは病気ではありません。

ところがほんの一部の学説では脳内ホルモンであるセロトニンの低下が見られるとのことで、選択的セロトニン再取込阻害薬SSRI(selective serotonin reuptake inhibitors)という薬物が使用されます。実はこれは大きな誤解があります。うつ状態の人にセロトニンが不足しているのではなく、このSSRIという薬物がうつの気分を一時的に晴らしてくれたため、セロトニンが高まれば効果があるだろう、ひいてはセロトニンが不足していたのだろうと強引に結論付けただけなのです。セロトニンを増やすという薬効があったため、脳でのセロトニン不足があったことになってしまったのです。脳内のセロトニン濃度など、測定できるわけがありません。すべて類推であり、投薬をさせるための学説です。

このSSRIという医薬品は、当初ルボックスという名前で1999年に新発売されました。ところが、自殺リスクを高め、凶暴性が増すとの悪評が立ち、改良型が出ました。

それがパキシルというSSRIですが、副作用は似たようなものでした。名前を変えて新薬のような印象を与えるいつもの手口です。ジェイゾロフトという新薬も発売され、これも非常に多く使われています。そしてまた改良型ということで、SNRI(セロトニンとノルアドレナリン再取り込み阻害薬)というサインバルタが2010年に発売されました。こうして副作用情報が広く認知されるとその名前を変え、新薬が出ます。これなら大丈夫というわけですが、似たり寄ったりです。

 

はっきり言って今では製薬会社もその副作用に気づき、添付書にはその危険な副作用がしっかりと記載してあります。すなわち製薬会社は、この副作用の但し書きを添付することで製造責任を逃れています。あとは処方する医師の責任ですというわけです。

ところが心療内科・精神科・神経内科などでは相も変わらずこれらの抗うつ剤を今でも日々処方しています。どの心療内科も出しているのだから、自院だけが責任を取らされることはないだろうと高をくくっているのでしょうか。投薬習慣を作れば、患者さん側の薬物依存もあって確実に通院をさせることが可能なのです。

こうした製薬会社も資本主義社会の中で他社と熾烈な競争をしながら活動しているわけで、商品を売るためには、あらゆる宣伝啓蒙活動をしています。それは仕方がないとしても、そんな宣伝活動に迂闊にも乗せられてしまう医師側に大きな責任があると思います。学会などで洗脳されて、薬効を信じこんでいる医師も居れば、また開業医も確実なお客(患者)を得るために、リピーターを確保しやすいよう、投薬を繰り返しています。これらが全額自己負担の自由診療ならまだ許せます。多額の税の補填を受けながらの自由経済活動は何かしっくりときません。健康保険の自己負担が少ないことも原因の一つかもしれません。

 

薬物以外の改善方法を

こうした心的トラブルに対しては、かつては職場の上司、信頼出来る知人友人、学校の恩師や親類などが打明け話を聞いてくれました。現代ではこうした関係がどんどん希薄になってしまい、適切な相手が見つからないことが多く、話す相手がなかなかいません。

昨今ではこの役目をリラクゼーション系の業界が肩代わりしているのではないでしょうか。温熱療法や、リフレクソロジーの店舗、鍼灸院やマッサージ店、いわゆる補完代替医療と言われる分野が大きく活躍するのです。クライアントの話をしっかり受け止めてくれる場所、またスキンシップを通じて大きな安心感を得られる場所として重要と思われます。速やかに投薬を中止し、こうした方針に変えるべきです。

しかしその以前に改めなければならないことが、こうしたうつ状態を招いてしまう、過酷な職場環境でしょう。ようやく最近、過労や時間外労働、パワー・ハラスメントなどの労働条件悪化の問題が論議されるようになりました。

職場で嫌な思いをした父親が、その腹いせで子供に辛く当たってしまう。その子が年少の弟をいじめ、その弟は腹いせでおとなしそうな同級生をいじめる。負の悪循環がドミノ現象のように連鎖するとき、マイナスの感情がどこまでも広がっていくのです。最終的に最も弱いものがその連鎖を受け入れてしまうので、うつの症状が発生します。どこかで食い止める必要があるでしょう。かつての軍隊組織における初年兵いじめのような陰湿な体質が、今でも厳然と残っています。

参考1「うつに非ず うつ病の真実と精神医療の功罪」 野田正彰著 講談社刊

 

参考2「のむな、危険! 抗うつ剤・睡眠薬・安定剤・抗精神薬の罠」北野慶著 新評論刊

スローフードについて

ようやく日本でも盛んになってきたのが、このスロー・フード運動です。ご存じのように世界中がファースト・フードに席巻にされていることに反発して始まった活動です。イタリアが発祥とも言われますが、日本の和食はスロー・フードの典型、かつては日本中がスローフードでした。

 

近年急速に増加しているガンなどの難病が、現代の食生活と無関係だという方は、今や少数派と思われます。また医療者にとって、ガン発生年齢がどんどん若年化していることは、非常に憂慮すべきことです。しかしどの食品が発ガンに関係があるかは、現時点でははっきりしていません。

 

しかし邪食の代表として最初に皆さんが思い浮かべてしまうのがいわゆるファースト・フードだと思います。しかしこの食文化そのものが、全て健康に悪いとは思いません。日本のおにぎりなどは、持ち運び簡単、箸や食器も要らずに食べられるファースト・フードの元祖です。一方で以下の4つの特徴を持つファースト・フードは要注意です。

 

第一に原材料にかけるコストをぎりぎりまで削減している場合です。こうした場合輸入品や大量生産の安価で安全とは思えない食材が使われることが多いのです。当然オーガニックや無農薬などの安全な食材とは無縁のものになります。これでは困ります。安ければいいという仕入れ形態が恒常化している業界、食の安全を考えていない業界は避けましょう。

 

第二に人件費にも徹底的に予算を削減している会社です。いわゆる非正規雇用が通常で、最低賃金での過剰労働が行われる危険があります。当然プロフェッショナルな社員の数は少なく、食材や食の安全に無関心な、いわゆる素人さんが店の前線で働いています。

 

第三に、コスト削減の方針が使い捨て文化に現れている場合です。食器洗いや重い食器などは最初からありません。紙コップ、紙皿、さらにプラスティック製品が大部分です。そのままテイクアウト(お持ち帰り)が簡単で、ゴミが増えることはなんとも思っていません。

第四に、宣伝広告費にはしっかり経費をつぎ込んでいる場合です。商品のプロパガンダには糸目をつけず巨大な資金を投入しています。お金に目のくらんだ芸のなさそうな芸能タレント等を使っていかにも美味しそうなコマーシャルを連日垂れ流し。ですから売り上げの相当な部分がマスコミを通じて首都圏に流れると言っても過言ではないでしょう。

これらは地産地消に全く貢献していません。

すべてのチェーンストアやフランチャイズの外食産業がこれらの悪条件を持っているわけではないですが、日本全国どの街にも同じ店ばかりが並んでいるという悲しい現実があります。

 

スロー・フード運動

こうしたファースト・フードに対してスロー・フードが生まれました。なんのことはない、昔から日本にあった食文化です。まずは家庭料理に戻れということです。地産地消、できれば無農薬栽培、有機野菜を使い、さらに季節の新鮮食材をじっくりと時間をかけて調理をし、さらに時間をかけてそれらを味わうのです。そんな当たり前のことが現在の都市では非常に困難になってきているのです。

 

親は共稼ぎ、子供はといえば学校や塾で過密なスケジュール、さらに通勤地獄、無意味な残業等の諸事情は、ゆっくり食事を作ったり食べたりする暇を与えてくれません。真にスロー・フードを実践しようとすれば大きな社会変革も必要になってくるのです。それこそゆっくりとスローに改善していくほかありません。即効性の改革は難しいようです。

 

スロー・リビング

スロー・フードの環境を整えるには、スロー・リビングに移行していく必要があります。衣食住を根本から見直していくことです。物を長く使う、大切に使う、直して使うという当たり前のことが、現代では少数派になってしまったのです。さらに建材や家具、衣服なども本来は身土不二(その土地のものを使う)でした。自然な材料、地元の材料で、地元の職人が地場産業として作ったもの、こうしたものは自然に還っていきます。日本中がその土地の木材、竹、草、岩石、土を使って家屋を作り、さらに家具や建具ができていました。

 

またこうした商品は、近江商人ではないけれど、三方も四方も満足なのです。つまりユーザー満足、売り手満足、作り手満足、環境も満足、この精神がスロー・ライフです。

 

ユーザーにも急がない、焦らない覚悟が必要ですし、最初は周りと比べない、飾らないと言う謙虚な姿勢も持っているべきでしょう。もったいない精神は大切にされるべきで、これこそが未来のスロー・ライフを推進します。

 

スロー・シティと言う運動がヨーロッパを中心に広がりつつあります。系列店の大型店舗で大量生産の割安品を買うのではなく、なるべく顔の見える地元の自営の店でお金を使います。お金が地元で循環すれば、大都市だけが潤うという悪循環が減っていきます。公共交通機関が十分にあって、マイカーがなくても生活ができる街づくり、隣近所が顔見知りで、介護保険とかの公共援助がなくても済む街が理想なのです。アンチ・グローバリズムという考え方が徐々に日本にも浸透してきました。様々な自営業が成り立つ街づくりをしていきましょう。税金に依存しない、政府の干渉が不要な街にしていきましょう。