血管がわかれば運動がしたくなりそして薬が要らなくなる

実際の血管の中がどうなってるか、鏡でも見るようにじっくりと観察できたのなら、だれだって毎日の食べ物や血の流れに無関心ではいられないでしょう。しかし残念なことにそれは叶いません。いろいろな手段を駆使して血管の内腔を推しはかるしかないのです。

血管の異常を知るには

第一の方法は、常識的なことではありますが、血圧測定です。血管に異常があれば、たいていの場合、血圧は上がります。しかし血圧が高いからといって、すべて血管が悪化しているとは限りません。また異常があるからといって、すべて高血圧になるとは限りません。血圧が正常な方が、くも膜下出血や心筋梗塞になることはいくらでもあります。

非常におかしなことに、血圧結果だけを気にして、それだけを下げれば事足れりと、降圧剤を漫然と内服するという愚行がまだまかり通っています。高血圧の原因をしっかり探りましょう。血圧測定は、血管の状態を推測する一手段に過ぎません。このことを理解していただきたいものです。自律神経の影響を受けやすく、非常に変動のある検査であることもご承知ください。

第二に血糖値の測定があります。高血糖は血管内膜のタンパクを障害します。動脈壁をもろくして出血や血栓を作ります。特に起こりやすいのが腎臓と網膜、足趾末端などです。糖質の摂りすぎ、過食、早食い、深夜の食事などはすべて高血糖の原因です。

第三の方法が、ご存知コレステロールの血中濃度を測定することです。これに関しても高いから悪いという短絡的思考から、とにかくコレステロール合成酵素阻害薬などという劇薬を漫然と内服することがまだ行われています。あくまで酸化したコレステロールが動脈硬化をもたらすのであって、正常コレステロールはなんの問題もありません。動脈硬化のメカニズムはほぼ解明されていますが、活性酸素の処理については難題です。なぜなら白血球にとって活性酸素は異物処理には欠かせない大事なものだからです。

できればその活性酸素の度合いが測定できればいいのですが、なかなかそれは実用化されてません。しかし脂質を酸化、劣化させるフリーラジカルが元凶であることは間違いありません。

しかし、カルシウムの動脈沈着は、脂質とはまた別のメカニズムで起こっていますので、脂質だけが問題なのではありません。

第四は、様々な特殊検査です。時間と手間さえかければ今は色々な方法で血管の状態を知ることができます。まずは網膜の血管を見ることです。眼科に行けば即検査していただけます。かつては内科医が眼底検査をするようにしていたのですが、どんどん分業化してが眼科医の仕事になってしまいました。また血管の状態は超音波で見ることができます。壁の状態や厚さがある程度わかります。頸動脈を観察することは大事です。他にも脈波伝播速度を調べたり、血管内皮機能を調べる「血流依存性血管拡張反応FMD」という方法もあります。これは後に述べる一酸化窒素にも関連があります。

 

お分かりのように、色々な新しい検査をすることはいいとして、その結果の数字だけを調整するという態度は、とても対症療法的で、お勧めできるものではありません。

 

適度な運動は全てに効く

当コラムでも繰り返し述べていますが、適度な運動のもたらす効果は絶大なものがあります。有酸素運動によって、過度な肥満が解消され、末梢血管が拡張し、塩分が排泄され、そのため血圧も下がります。そして何よりストレスが発散されるという効果があります。ですから高血圧を薬品でコントロールすることで、運動や食事をおざなりにしてしまえば何にもなりません

 

そしてもう一つ、運動は一酸化窒素(NO)の分泌をさかんにします。この一酸化窒素(NO)という物質については、最近広く研究がなされているところです。これは血管内膜の細胞が絶えず分泌して血管内面の修理や新生を行う、いわばガス状ホルモンです。このNOは、ある酵素によってアミノ酸から合成されます。今はその合成酵素が正確に分析され、その酵素を働かなくする薬剤も存在します。そんなものは血管にとっては毒なので、薬にならないと思われるでしょうが、どことがどっこい、これが最新の抗がん剤になっているのです。当然副作用があります。

 

さてこのNO、いろいろな働きがあり、これを利用してこんな薬物もできています。狭心症の「ニトログリセリン」は、このNOを分泌させます。おなじく「リアップ」という名をお聞きになったことがありますか?ご存知発毛剤です。毛根の血流をアップさせるのです。また「バイアグラ」もご存知でしょう。血流アップの作用は同じです。

 

過剰に注意

しかしこのNOも両刃の剣で、過剰になってもこまります。NOの低下では確かに動脈硬化や高血圧が生じますが、NOが高くなり過ぎても異常が起こると考えられています。幸い?このNOの濃度を測定することは通常は行いませんから、一喜一憂することはないのですが、人為的に薬剤でこのNOを操作することは戒めなければなりません。かならず反作用がありますから。

 

薬物ではなく、運動によってNOの活動を活発にして、必要な場所に血管が新生することが大切だと思われます。もう一つ、咀嚼もNO分泌を推進します。よく噛んで食後に軽く運動する、これができれば苦労はしません。

 

末端のストレッチ、マッサージ

運動に際してまず行っていただきたいのは、末端のストレッチ、血行回復です。いつも指導しているように手や足の指を十分に曲げ伸ばしし、充分マッサージしてください。顔のまわりも重要です。頭頂、目の周り、鼻の脇などもこすってください。また耳や首もしごいたりマッサージをしてください。自ら行う全身マッサージは血行改善に貢献します。

 

過度の運動でダメージ

運動もさきほどのNOと同様、少なくてもいけませんが、多すぎてもどうかと思われます。日頃やってなかった人が急に運動を始めて、過剰な活性酸素をつくってしまい、その除去が間に合わない場合、動脈の壁が異常を起こすことは十分に考えられます。ガンになるケースもあるので本当にご注意を!

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