スローフードについて

ようやく日本でも盛んになってきたのが、このスロー・フード運動です。ご存じのように世界中がファースト・フードに席巻にされていることに反発して始まった活動です。イタリアが発祥とも言われますが、日本の和食はスロー・フードの典型、かつては日本中がスローフードでした。

 

近年急速に増加しているガンなどの難病が、現代の食生活と無関係だという方は、今や少数派と思われます。また医療者にとって、ガン発生年齢がどんどん若年化していることは、非常に憂慮すべきことです。しかしどの食品が発ガンに関係があるかは、現時点でははっきりしていません。

 

しかし邪食の代表として最初に皆さんが思い浮かべてしまうのがいわゆるファースト・フードだと思います。しかしこの食文化そのものが、全て健康に悪いとは思いません。日本のおにぎりなどは、持ち運び簡単、箸や食器も要らずに食べられるファースト・フードの元祖です。一方で以下の4つの特徴を持つファースト・フードは要注意です。

 

第一に原材料にかけるコストをぎりぎりまで削減している場合です。こうした場合輸入品や大量生産の安価で安全とは思えない食材が使われることが多いのです。当然オーガニックや無農薬などの安全な食材とは無縁のものになります。これでは困ります。安ければいいという仕入れ形態が恒常化している業界、食の安全を考えていない業界は避けましょう。

 

第二に人件費にも徹底的に予算を削減している会社です。いわゆる非正規雇用が通常で、最低賃金での過剰労働が行われる危険があります。当然プロフェッショナルな社員の数は少なく、食材や食の安全に無関心な、いわゆる素人さんが店の前線で働いています。

 

第三に、コスト削減の方針が使い捨て文化に現れている場合です。食器洗いや重い食器などは最初からありません。紙コップ、紙皿、さらにプラスティック製品が大部分です。そのままテイクアウト(お持ち帰り)が簡単で、ゴミが増えることはなんとも思っていません。

第四に、宣伝広告費にはしっかり経費をつぎ込んでいる場合です。商品のプロパガンダには糸目をつけず巨大な資金を投入しています。お金に目のくらんだ芸のなさそうな芸能タレント等を使っていかにも美味しそうなコマーシャルを連日垂れ流し。ですから売り上げの相当な部分がマスコミを通じて首都圏に流れると言っても過言ではないでしょう。

これらは地産地消に全く貢献していません。

すべてのチェーンストアやフランチャイズの外食産業がこれらの悪条件を持っているわけではないですが、日本全国どの街にも同じ店ばかりが並んでいるという悲しい現実があります。

 

スロー・フード運動

こうしたファースト・フードに対してスロー・フードが生まれました。なんのことはない、昔から日本にあった食文化です。まずは家庭料理に戻れということです。地産地消、できれば無農薬栽培、有機野菜を使い、さらに季節の新鮮食材をじっくりと時間をかけて調理をし、さらに時間をかけてそれらを味わうのです。そんな当たり前のことが現在の都市では非常に困難になってきているのです。

 

親は共稼ぎ、子供はといえば学校や塾で過密なスケジュール、さらに通勤地獄、無意味な残業等の諸事情は、ゆっくり食事を作ったり食べたりする暇を与えてくれません。真にスロー・フードを実践しようとすれば大きな社会変革も必要になってくるのです。それこそゆっくりとスローに改善していくほかありません。即効性の改革は難しいようです。

 

スロー・リビング

スロー・フードの環境を整えるには、スロー・リビングに移行していく必要があります。衣食住を根本から見直していくことです。物を長く使う、大切に使う、直して使うという当たり前のことが、現代では少数派になってしまったのです。さらに建材や家具、衣服なども本来は身土不二(その土地のものを使う)でした。自然な材料、地元の材料で、地元の職人が地場産業として作ったもの、こうしたものは自然に還っていきます。日本中がその土地の木材、竹、草、岩石、土を使って家屋を作り、さらに家具や建具ができていました。

 

またこうした商品は、近江商人ではないけれど、三方も四方も満足なのです。つまりユーザー満足、売り手満足、作り手満足、環境も満足、この精神がスロー・ライフです。

 

ユーザーにも急がない、焦らない覚悟が必要ですし、最初は周りと比べない、飾らないと言う謙虚な姿勢も持っているべきでしょう。もったいない精神は大切にされるべきで、これこそが未来のスロー・ライフを推進します。

 

スロー・シティと言う運動がヨーロッパを中心に広がりつつあります。系列店の大型店舗で大量生産の割安品を買うのではなく、なるべく顔の見える地元の自営の店でお金を使います。お金が地元で循環すれば、大都市だけが潤うという悪循環が減っていきます。公共交通機関が十分にあって、マイカーがなくても生活ができる街づくり、隣近所が顔見知りで、介護保険とかの公共援助がなくても済む街が理想なのです。アンチ・グローバリズムという考え方が徐々に日本にも浸透してきました。様々な自営業が成り立つ街づくりをしていきましょう。税金に依存しない、政府の干渉が不要な街にしていきましょう。

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